脅威の高速ファンファーレ・ブラスとスウィングで登場した前作から時を経て、ボルドー出身の8人は更に表現の幅を広げて来た。前作でもカヴァーしていたジョルジュ・ブラッサンスのように詩的な感受性を持ったシャンソンと手練た8人のメンバーによる15種ものアコースティック楽器が入り乱れる様は、場末のバーで始まったゆったりとしたデキシーランド・ジャズがボタン式アコーディオンの飛び入りによってミュゼットを通過し、チューバの炸裂するようなベース音によって一挙にバルカニックになってゆくよう。今回は編拍子を用いた自在なリズムや音の隙間までにポエティックな奥行きを増し、速い曲だけではなくおとぎ話のようなファンタジック世界までをも感じさせる注目盤。コンピレーションやツアー、別プロジェクトでの共演を経て、HDL (レ・ユルルマン・ドゥ・レオ)やレ・ゾグル・ドゥ・バルバックと肩を並べる存在感を放ち、フランスの新たなシーンを高揚させている。