前衛パフォーマンスの先駆けであるトン・ゼーの楽曲をサンパウロの女性シンガー、ヘジーナ・マシャードがトリビュート。
ヘジーナ・マシャードのキャリアはそもそもが、'81年にトン・ゼーのバックで歌い始めたのがスタート地点。というわけで、身近で見ていた奇才トン・ゼーの一筋縄ではいかない捻った楽曲に新たな息吹を吹き込むべく、前衛的なサンパウロ勢のミュージシャンと作り上げたのがこの作品。ヴァングアルダ・パウリスタ・ムーヴメントの中心的存在だったグルーポ・フーモのダンチ・オゼッチ(ナー・オゼッチのきょうだい)がギターとプロデュースを担い、エクスペリメントな打楽器奏者 - ギリェルミ・カストルピが参加、clなど生の管弦を用いながら、バイーア生まれの奇才が生んだシニカルでシアトリカルな楽曲をサンパウロの洗練で染め上げています。デヴィッド・バーンに"再発見"されたトン・ゼーの復帰作'92年からの楽曲が冒頭3曲、そして既存のスタイルが確立されている音楽を分解再構築してみせるエストゥダンド・シリーズのサンバ編('73年)から"To"、ボサノヴァ編('08年)から"Joao nos tribunais" をそれぞれ取り上げています。名曲"Nave maria"などは収録されていませんが、女性シンガーの慈しみ歌う佇まいと前衛的なサンパウロのミュージシャンによるチェンバーなアレンジで、トン・ゼー楽曲の新たな側面に気付かされる好盤。