ブラジル軍政下、英国ロンドンへ亡命していたカエターノ・ヴェローゾが、1971年に当地のチャペル・レコーディング・スタジオで録音したアルバム『Transa』。1972年にブラジルで発表された本作は、ヨーロッパへの置き土産のような一枚でもあります。
英語詞を多く含む全7曲。英国人ラルフ・メースがプロデュースを手がけ、ディレクションはジャルズ・マカレーが担当しています。
トロピカリズモの精神を体現する「You Don't Know Me」、レゲエ・サウンドへの関心がうかがえる「Nine Out Of Ten」。そして、ビートルズの「The Long and Winding Road」へのオマージュともいえる「It's a Long Way」、モンスエト・メネゼスのサンバをロックで解釈した「Mora Na Filosofia」など、聴きどころは尽きません。
英国で異邦人として暮らすなかでの孤独や、故郷バイーアへの望郷の念。ジャルズ・マカレーのロックなギターをはじめ、70年代初頭のフォーク・ロック・サウンドと、ブラジル由来のリズムや音色が交錯する、モザイク模様のような素晴らしい作品です。
ほかの参加メンバーは、アウレオ・ソウザ(ds)、モアシール・アルブケルキ(b)、トゥッチ・モレーノ(per)。アコースティック・サイケデリック・ブルースとも呼びたくなる「Nostalgia (That's What Rock'n'Roll Is All About)」には、ガル・コスタ(vo)とアンジェラ・ホホー(harp)も参加しています。
